それでは、ゆっくりはじめていきましょう。

いきなり具体的なITサービスの使い方を追いかけていくとすぐに足が攣りそうですので、最初はストレッチをしながら周辺の状況を把握するところから。

ということで、こんな数値をひとつ。

2015年に中小企業庁が帝国データバンクに委託して実施したアンケート調査によると、「IT人材が確保されている」と回答した企業は、どの業種でも『3割程度』だった、とのことでした。

小売業は特に不足感が強そうです。レジ前に機械山ほどありますしね……。

一方で、6割近くの企業が、「IT人材が不足している」と感じている、とのことで、『ITで困っている経営者さんが多い』という状況は、データを見ても明らかなようです。

このデータ、今から7年前のものですので、現在はさらに不足の度合いが強まっている可能性も十分あります。「IT人材が足りていない」「DXが進まなくて困っている」というニュースは、最近でもあちらこちらで見かけますし。

IT人材不足、それは私たち小さな会社の経営者にとっても、実に頭の痛い問題です。どこかにイイ感じのIT人材、いないかしら。

……と、さっきから私、当たり前のように「IT人材」なる言葉を使っていますが、この「IT人材」って、そもそもどういう意味なのでしょう?

「ITを十分に使いこなせる人材」程度に、なんとなく理解はしているつもりでいたのですが、あらためて考えてみると、少々輪郭がボケているような気がしてきました。

姿勢が徐々に前屈みになっていく不思議な進化の図。

昔むかし(25年……30年……位前?)、「IT」と言えば「パソコン(パーソナルコンピューター)」のことで、「IT人材」と言えば「パソコンに詳しい人」、という意味で使われていたような気がします。

その頃は、パソコン自体も今よりずっと性能が低くて、できることが多くなかったために、例えば「ホームページを見ることができて」「メールでやりとりができて」「オフィスツールで、文章作成やグラフ作成ができる」くらいでも、十分「使いこなしている」感じでした。

とってもシンプルで、「IT」がわかりやすい時代だったわけです。

ところがその後、パソコン本体の性能の向上と、それを取り巻くサーバー、及びネットワーク環境の進化、そして、スマートフォンなる革新的デバイスの登場で、「ITの世界」は劇的に広がっていきます。

ホームページは「見るもの」から「使うものへ」と進化し、メールのやりとりは「SNS」や「音声/映像」でのやりとりに。オフィスツールは「業務に合わせて、最適なツールをクラウドサービスから選ぶ」という、当時では考えられないような形態になりました。このまま進むと、少し先には、「VRゴーグル」を使って「メタバース」なるデジタル空間で生活するような時代が来るかもしれません。

「IT」は、「パソコン」から「デジタル空間」へ、「IT人材」は、「パソコンという【機械】に詳しい人」から「デジタル世界という【概念】に詳しい人」へーー

この街、見た目は綺麗だけど住んでみたらCPUの上なのでとっても暑そう。

はい、ストップ。うーむ、これが「IT」や「IT人材」という言葉が、とってもヤヤコシイことになっている背景なんじゃないかと思います。

「IT」という言葉の意味が、ものすごいスピードで変わって(広がって)いるので、それにあわせて「IT人材」というものの定義も、ものすごいスピードで変わってきています。わずか数年単位で、同じ言葉の内容がこんなにも変わってしまうことって……ねえ。

「10年前のIT」に詳しかった人、「5年前のIT」に詳しかった人、それが、「今のIT」に詳しい人ではないかもしれない。この30年間、ITに関わる人が増え続けているにもかかわらず、IT人材が常に不足してしまう理由は、どうもこの辺りにありそうです。

もしそうであれば、解決策はひとつだけ。そう、「今のITに詳しくなり続ける」ことです。……そりゃまあ、バッサリ言ってしまえば……そういうことでしょう。

……が、実際のところ、「今のIT」に詳しくなるためには、「今のITだけ」を学んでもなかなかムズカシそうな気がします。今のITは高度に洗練されすぎていて、専門家でもない私たちが、その「仕組み」を知る用途には向いていないのです。

センサーとコンピューターで完全武装した近未来の車を見て、車が動く仕組みを学べ、と言われているのと同じようなイメージ。車を動かす機能以外何も付いていなかった昔の車の方が、仕組みを学ぶのには丁度良い気がしますよね。

そんなわけで、「今のIT」を学ぶハードルは、時間の経過とともに上がってきています。私たちが詳しい人にポンと気軽に聞いてしまう、「その機能は、どうしてそうなっているの?」という質問は、「使い方」と「仕組み」と「経緯」を理解していないと答えられない、とんでもなく高度な質問なのかもしれません。

こういうところも、「IT人材」が不足してしまう原因なのかもしれませんね。

ということで、このブログでは、今の新しいITサービスに、なるべく「仕組み」と「経緯」の部分を足しながらお話しできればと思います。なんだかこのままですと更新頻度より早いペースでITが進化していきそうですが、ガンバっていきましょう。